土地の個人売買の進め方と注意点
土地の個人売買の進め方と注意点
このページでは、土地の個人売買について、以下のことを解説します。
個人が不動産を売買することは、法律的に問題なくできます。そのために、資格などをとる必要はありません。
また、売買契約書、重要事項説明書などの書類は必須ではありません。
とは言え、後になってトラブルが起こらないように、できるかぎり不動産業者のやり方に則ることをおすすめします。
土地の個人売買のメリット・デメリット
不動産の売買は、普通の人が一生のうちに何度もやることではありません。
にもかかわらず、法律の知識、不動産取引の慣習、地域の相場価格など、さまざまな専門知識が必要になります。
ですから、不動産の取り引きでは、不動産業者など専門家の活用をおすすめします。
不動産業者を通しての土地売却については、土地売却の査定・価格・費用・税金・必要書類などの基本と注意点で説明しています。
身内や知り合いに売るときは、仲介手数料が惜しい
ただし、不動産業者を利用すると、仲介手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料は、売買価格の3%以下と決まっています。3%と聞くと小さいように感じられますが、3000万円の土地ならその3%は90万円です。
たとえば、親子や親族間での売買、知人・友人との取り引きなどで、不動産業者を使うのは、もったいなく思えるかもしれません。
買い手を見つけるという、業者に頼みたいことが、すでに解決しているわけですから。
そういうケースで、個人売買がよくおこなわれています。
個人売買のメリット、デメリット
個人間での不動産売買のメリット、デメリットは、次のとおりです。
メリット |
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デメリット |
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個人売買は、住宅ローンを組むときに不利
個人売買は、住宅ローンを組むときに不利になります。
金融機関から見ると、個人売買には、次のようなリスクがあります。
- 売買契約に不備や漏れがあり、将来トラブルになるリスクがある。
- 個人売買が、不動産取引を装った不正取引かもしれない。
不動産業者は、宅地建物取引業法などの法律に基づいて、不動産取引を媒介します。
そして、ある程度長く営業している不動産業者なら、金融機関から見て取り扱いの実績があります。
それに比べて個人売買は、信頼感が低くなります。たいていの金融機関は、リスクを感じて、貸し付けることに二の足を踏むようです。
土地を個人売買するときの、手続きの流れ
個人売買に、決まった進め方があるわけではありません。
むしろ、宅地建物取引業法などの法律の拘束を受けないので、自由度が高くなります。
とは言え、後でトラブルにならないように、適切に売買を進めると、不動産業者を介した土地売却(土地売却の査定・価格・費用・税金・必要書類などの基本と注意点で説明しています)と同じような流れになるはずです。ご確認ください。
以下では、個人売買で、とくに意識していただきたいことにしぼってご説明します
土地の売価は、相場を踏まえて決定する
これから購入者を探すにせよ、親しい人に売却することが決まっているにせよ、土地の適正な取引価格を知っておく必要があります。
親しい人に売るときに、相場より安い売価を設定すると、安い金額は贈与したと見なされて、買い手に贈与税がかかります。
親しい人と売買するときでも、相場を踏まえて、損にならない売買価格を設定してください。
買い手をこれから探す
身内や知り合いと約束があるときは問題ありませんが、これから買い手を探すのは、かなり大変です。
ひとまず、売りたい土地に隣接する土地の所有者に、声をかけてみることをおすすめします。
それが不成功に終わり、不特定多数を相手に広告を打つとなったら、不動産業者等の利用を再度ご検討ください。
インターネット広告を出したり、チラシを配る(ポスティングや新聞折込)にしても、結果を出しやすいノウハウがあります。素人考えで実行すると、お金の無駄遣いになる恐れがあります。
また、広告を打つときは、問い合わせに対応できる準備が必要になります。
質問などに的確に返答できないと、見込み客を逃してしまうかもしれません。
土地売却に専念できる環境にないなら、不動産業者等に頼むほうが、スムーズに進みます。
契約書など必要書類を準備
売買に際して、どうしても必要な書類は、以下です。
- 権利証または登記識別情報通知書(土地の取得時期によります)
- 売り主の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 買い主の住民票
- 固定資産評価証明書(本年度のもの)
- 司法書士への委任状
- 売買契約書
これらは、所有者の移転登記に必要です。
個人売買であろうと、移転登記はきっちりとやっておきたいです。
重要事項説明書などは、省略できるけれど・・・
一方、売買契約のための書類は、上の売買契約書以外は、売り主と買い主の合意があれば省略できます。
ただし、買い主が住宅ローンを組むときは、そのための必要な書類(重要事項説明書など)も、作成しなければなりません。
買い主との事前の打ち合わせで、必要書類をご確認ください。買い主が住宅ローンの審査を通過できないと、売買そのものが不成立になります。
また、住宅ローンの利用がなくても、面識のない他人と取引するときは、不動産業者が仲介するときと同じだけの契約関係書類を作成しましょう。
それらの書類には、売買後のトラブルを回避するための経験則が反映されています。
物件引き渡し、移転登記
一般的には、売り主、買い主、司法書士など関係者が同じ日に集まって、代金の支払い、移転登記、売り主にローンがあればそれの全額繰り上げ返済、鍵の受け渡しなどを、その日のうちに済ませます。
面識のない他人との取り引きでは、段どるのが大変ですが、このとおりに実行されることをおすすめします。理想は、経験豊富な不動産業者を利用することですが・・・
個人売買にかかる費用・税金
土地売買のためにかかる最低限の費用として、以下が考えられます。
移転登記の費用と税金です。
印紙税 |
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登録免許税 |
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司法書士への報酬 |
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所得税・地方税 |
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税金は税務署に相談しながら
上表の税金のうち、印紙税や登録免許税は、売買の手続きを進めていけば、自然と収めることになります。納税をおこなる危険は低いです。
一方、所得税・地方税は、確定申告を忘れずにおこないたいです。
計算式は単純ですが、何が経費にあてはまるか等の判断は、素人では不安があります。
知り合いに税理士がいれば、ご相談ください。いなければ、税務署に直接相談するのが、安上がりで手っ取り早いです。
個人売買でも、司法書士を利用したい
司法書士の役割は、おもに登記申請書類作成です。
登記に必要な書類の作成方法を法務局が公開しているので、一般人でも書類を作成できます。
だから、どうしても司法書士を使わなければならないわけではありません。
しかし、司法書士を使うことには、書類作成実務以外にも重要な意味があります。
- 買い主がローンを組むときは、金融機関から、司法書士の関与を求められる。
- 中立的な法律の専門家が関与することは、物件引き渡しのトラブル回避になる。
買い主がローンを組むとき、通常、金融機関は対象の物件に抵当権を設定します。
抵当権の設定は登記しなければなりませんが、金融機関はその手続きを確実におこなうために、司法書士の関与を求めます。
また、物件引き渡しは、お金や物件が実際に動くステップなので、トラブルや行き違いが起こりやすいです。
司法書士は、引き渡しの仲介をおこなうわけではありませんが、引き渡しに関与することになります。
中立的な専門家が関与することで、実務が交通整理されて、スムーズに捗ることになります。
トラブルの中でも、もっとも気をつけたいのが瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、売り主が買い主に対して負う責任で、売った物件に隠れた欠陥があったときに、買い主に損害賠償します。
その欠陥のために、買い主がその目的を果たせないときは、契約を解除することもできます。
原則として、瑕疵担保責任があるのは、買主がその欠陥を知ったときから1年以内、または物件引渡しから10年以内です。
ただし、個々の売買契約において、瑕疵担保責任の有効期間を短縮したり、責任そのものを無くすことができます。
もっとも、売り主が、実はその瑕疵を知っていた(あるいは知り得た)場合などは、原則どおりに瑕疵担保責任を求められます。
個人売買は、不動産業者が仲介した取り引きより、売買後のトラブルが起こりやすいです。
まとめ
このページでは、土地の個人売買の進め方や、ご注意いただきたい点を説明しました。
面識のない他人との売買や、買い主が住宅ローンを組むときは、手続きを進める上で負担が大きくなるばかりか、不備やトラブルが発生しがちです。
不安になれば、そこから不動産業者を入れることは可能です。ただし、仲介手数料が生じるので、売買当事者でよく話し合って決めてください。
また、土地売買の個別の問題については、別に記事をご用意しています。