繰り上げ返済の仕組みと手続き、する?しない?

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繰り上げ返済の仕組み、手続き、するかしないかの判断のポイント

繰り上げ返済とは?その仕組み

繰り上げ返済は、毎月の返済とは別に、借入額の一部または全額を返済することです。

一部を繰り上げ返済した場合、それによって残りの返済期間を短縮する(=返済期間短縮型)か、期間の長さはそのままで、毎月の返済額を減らす(=返済額軽減型)かを選べます。

同じ時期に同じ額を繰り上げ返済すると、期間短縮型のほうが利息の軽減が大きく、総返済額が少なくなります。

ただし、返済は毎月のことなので、どちらの型が好ましいかはケース・バイ・ケースです。

住宅ローンの繰り上げ返済のイメージ図

繰り上げ返済シミュレーション(返済例)

以下の内容で住宅ローンを返済中の人がいるとします。

  • 借入金 3,000万円
  • 返済はボーナス併用なしの元利均等返済
  • 返済期間 30年(360回)
  • 全期間固定金利で年3%
  • 現在、毎月の返済額は 126,481円
  • 予定返済総額 45,533,001円

この人が、返済期間5年経過後(60回目の返済の直後)に、500万円を一部繰り上げ返済したとします。

期間短縮型の返済

月々の返済額を減らすように、500万円を一部繰り上げ返済したとします。

月々の返済額 102,770円
残り返済回数 300回
返済総額 43,419,873円

月々の返済額が23,711円安くなり、返済総額は2,113,128円減りました。

月々の返済は楽になりますが、返済総額の節約は、繰り上げ返済した金額(500万円)の半分以下です。

返済期間短縮型の返済

返済期間を短縮するように、500万円を一部繰り上げ返済したとします。

月々の返済額 126,472円
残り返済回数 224回
返済総額 40,918,985円

月々の返済額がほとんど変わりませんが、返済期間は6年4ヵ月短縮され、返済総額は4,614,016円減りました。

返済総額の節約は、繰り上げ返済した金額(500万円)には及びませんが、近い金額です。

返済総額の軽減効果には、かなり差がありますね。

お勤めでしたら、定年までに返済を終えたいという理由で、返済期間短縮型を選ぶ方々も多くいらっしゃいます。

繰り上げ返済の手続きは?いくらからできる?手数料は?

繰り上げ返済の手続きの面で大切なことをご説明します。

手続きは、窓口またはネットで

繰り上げ返済の手続きは、金融機関の窓口でも、インターネットバンキングでもできます(金融機関によっては、どちらか一方だけです)。

インターネットバンキングで手続きでは、返済シミュレーションの機能も提供されています。

お金に余裕ができたときに、気軽に繰り上げ返済するなら、ネットでのお手続きが便利です。

手数料も、窓口より安くなります。

繰り上げ返済はいくらからできる?

金融機関やローンにより異なりますが、最低1万円以上としているところが多いです。

ただし、1円からできるところもあります。

フラット35はやや特殊で、金融機関の窓口で手続きするときは100万円以上が、インターネットのときは10万円から繰り上げ返済できます。

繰り上げ返済の手数料は?

手数料は、金融機関によって異なりますし、同じ金融機関でも、手続きの内容や方法によって異なります。

  • 全額繰り上げ返済か、一部繰り上げ返済か。
  • インターネットでの手続きか、窓口での手続きか。
  • 保証がある借り入れのときは、保証会社の事務手数料も。

いくつかの金融機関の例をご覧ください。

みずほ銀行の繰り上げ返済手数料

シンプルに、インターネットバンキングか窓口の2パターンです。

インターネット 0円
窓口 33,000円

りそな銀行の繰り上げ返済手数料

手続き方法と金利タイプによって、手数料は異なります。

一部繰り上げ返済
インターネット 0円
窓口 変動金利 5,500円
全期間固定金利 5,500円
固定期間選択間型 33,000円

この他に、保証会社の事務手数料11,000円がかかります。

全額繰り上げ返済

インターネットでは手続きできません。

窓口 変動金利 11,000円
全期間固定金利 11,000円
固定期間選択間型 33,000円

この他に、保証会社の事務手数料11,000円がかかります。

イオン銀行の繰り上げ返済手数料

シンプルに、全額繰り上げ返済か一部繰り上げ返済かの2パターンです。

全額繰り上げ返済 55,000円
一部繰り上げ返済 0円

繰り上げ返済を、するかしないか?

住宅ローンの元金=残高は利息を生みます。

そして、安全性の高い元本保証のある貯蓄手段では、ローンの利息以上の高利回りを期待できません。

そうしたことを考え合わせると、繰り上げ返済はやった方がよいですし、できるだけ早くやったほうが返済総額を節約できます。

これが原則ですが、次のいずれかに当てはまるときは、繰り上げ返済が有益なのかを、返済シミュレーションなどでしっかりご確認ください。

慎重に検討したいケース
  • 住宅ローン控除を受けられるうちは、繰り上げ返済しないほうがトクなケースがある。
  • 近々まとまった出費(学校の入学金、家のリフォームなど)が見込まれるとき。
  • 繰り上げ返済の手数料が高い金融機関(地方銀行など)の場合。

住宅ローン控除については下で説明します。

繰り上げ返済と住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、所定の条件に当てはまると、返済期間の10年間は、年末時のローン残高の1%が所得税から控除される制度です(ただし、最大40万円まで)。

現在の低金利下では、住宅ローンの金利が1%を切ることも珍しくありません。

繰り上げ返済をすると、控除される金額が小さくなりますし、返済期間が10年未満になると、そもそも控除の対象外になってしまいます。

最近は、繰り上げ返済シミュレーションだけでなく、住宅ローン控除シミュレーションも、インターネット上できるようになっています。

借り入れの内容以外には、「年収」「扶養家族」「職業」「住宅の種別」くらいの情報があれば試算できます。

まとめ

もし、繰り上げ返済を積極的におこなって、返済総額や期間を縮めたいとお考えなら、繰り上げ返済手数料にもこだわりたいです。

現在、手数料の高い住宅ローンをご利用でしたら、これをきっかけに、手数料ゼロのローンへの借り換えを検討されてはいかがでしょうか。

繰り上げ返済より借り換えのほうが、手続きは多くて、手数料も高いです。

しかし、借り換えることで、借り入れ金利を下げることができて、かつ繰り上げ返済の手数料がゼロになるなら、やる価値はあります。