相続した不動産の売却と税金
相続した不動産の売却と税金
このページでは、相続した不動産の売却と税金について解説します。
相続した不動産でも、売り方そのものは、通常の売却と同じです。
ただし、税金の取り扱いが通常と異なって、複雑になります。
そのときになってあわてないように、しっかりポイントを押さえておきたいです。
不動産を相続した時にかかる税金
まず、単純に不動産を相続したときにかかる税金について、まとめてご覧ください。
登録免許税 |
相続にともなって、登記上の所有者を、亡くなった人から相続した人に変更しなければなりません。その手続きをするときにね登録免許税という税金を納めます。 税額は、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。 |
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相続税 | 他の相続財産と合わせて、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)より高くなったときは、超えた分が相続税の対象になります。 |
固定資産税・都市計画税 | 相続した財産を所有している限り、固定資産税(課税評価額×1.4%)が毎年かかります。立地によっては、都市計画税(課税評価額×0.3%)もかかります。 |
相続税が軽減される特例
なお、相続する不動産が、使われ方によっては、特例が適用されて、不動産評価額が軽減されます。
概要をご案内すると、以下のような特例があります。
特典 | 条件等 | |
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居住用の不動産 | 80%減額 |
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事業用の不動産 | 80%減額 |
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事業用の不動産 | 50%減額 |
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これらの特例は複雑なしくみなので、税理士などの専門家にご相談ください。
ちなみに、相続税がかからないときは、検討不要です。
相続放棄という選択肢
相続することにメリットがないときは、相続放棄という手段もあります。
被相続人が亡くなってから3ヵ月以内に、家庭裁判所に申し立てると、相続放棄できます。
相続を放棄すると、相続権を失うかわりに、納税などの義務もなくなります。
相続放棄は、個々の相続人が、自分の判断でできます。他の相続人の許可を得る必要はありません(ただし、すみやかに連絡してあげましょう)。
また、相続放棄は、するかしないかの二択です。一部だけ相続放棄する、選り好みは認められません。
相続した不動産を売ったときにかかる税金
いったん相続するので、上で説明した相続税などはかかります。
ここでは、相続した不動産を売却することによる所得の税金について、説明します。
ところで、相続した不動産を売る場合、次の2つのパターンが考えられます。
- 相続した不動産を、居住しないで、そのまま売却。
- 相続した人が、しばらく居住した後に売却。
どちらかによって、税金のかかり方は大きく異なります。
相続した不動産を、そのまま売却
このケースでは、空き家を譲渡したときの、通常の課税がおこなわれます。
つまり、売却によって得た利益(譲渡所得)に対して、次の税率で所得税と住民税がかかります。
5年超保有後の売却 |
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保有期間5年以内の売却 |
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なお、相続した実家を売却する場合に限り、親が保有した期間も含めます。よって、親が5年以上所有していた不動産であれば、5年超の税率が適用されます。
相続した人が、居住した後に売却
相続した人が、そこに自宅として居住した後で売却したときは、次の特例を受けることができます。
- 3000万円の特別控除の特例
- 10年超所有の場合の軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換え特例
- マイホームの買換えの場合の譲渡損失の繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
税金のかかり方は、居住せずにそのまま売却したときと同じですが、数々の特例によって、納税額は大きく異なります。
相続から3年10ヵ月以内に売却すると減税に
相続税を支払って相続した不動産を売却するなら、相続から3年10ヵ月以内に売るほうが、所得税が軽くなります。
というのは、税額算出の元になる譲渡所得(売却したことによる利益)は、以下の式で算出します。
相続から3年10ヵ月以内に売却すると、相続のときに収めた相続税を、取得費に含めることができます。
そのぶん譲渡所得が低くなり、所得税も安くなります。
不動産の売却は、相続前と相続後のどちらがオトク?
相続後に使われる見込みのない不動産であれば、相続前に売却することも考えられます。
相続前に不動産を売却するメリット
不動産で残すより、現金化して残すほうが、相続人の負担が軽くなります。
相続人の間で分割のしかたを相談しなくても良いし、登記の手続きも不要になります。
では、金銭的には、相続前と相続後のどちらで売却するほうがオトクでしょうか?
相続税がかかるなら、相続後の売却が有利
相続税がかかる場合、つまり相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)より高くなるときは、相続後に売却するほうがオトクです。
その理由は、現金で相続するより、不動産のままで相続するほうが、相続税が安くなるからです。
現金で相続したときは、そのままの金額が課税対象になります。
それに対して、不動産で相続し、相続後に売却するときは、次の2つの制度のおかげで、課税額が軽減されます。
相続後に売却するメリット
- 相続から3年10ヵ月以内に売却すると、相続税を取得費に含めることができる(売却による税負担が軽くなる)。
- 相続税の計算では、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価されるため、時価より安く評価される(税額も安くなる)。
不動産を売却して納税資金に充てる場合の注意点
相続税には、お金ではなく物で納税する物納という制度があります。
金銭での納税が難しく、かつ相続した不動産をつかわないなら、家屋や土地での納税が、制度上は可能です。
「物納」をおすすめできない理由
ただし、次の2つの理由で、おすすめできません。
- 物納はなかなか認められない(金銭での納税が困難であることを、税務署に認めてもらう必要がある)。
- 不動産の価値は、税法上の基準で評価されるため、通常は時価より低く評価される。
よって、相続した不動産で納税したいときは、それを売却することによる納税資金確保を、ご検討ください。
不動産を売却して、納税資金とするときの注意点
納税資金の確保が目的だろうと、通常の不動産売却の変わるところはありません。
しかし、次の2つのことは起こりがちなので、可能であればあらかじめ備えておきたいです。
10ヶ月というタイムリミットがある
相続税の納税には、相続開始から10ヵ月以内という期限があります。
「期限までに売らなければならない」というプレッシャーのために、不利な価格や条件を受け入れてしまうリスクがあります。
ちなみに、相続税には延納という制度があって、税務署の許可を得て期日を延ばすことはできます。
しかし、手続きは面倒ですし、担保を提供しなければなりませんし、延納による利子が発生します。
相続人の意見がまとまらない恐れ
10ヵ月という期間は、一般論として、不動産を売却するための期間として、短すぎることはありません。
相続開始から、手際よく売りに出せば、希望の金額に達するかはともかく、期日までに売れる可能性はそこそこ高いです(物件の特性によりますが・・・)。
ただし、相続人の間で遺産分割について考えがまとまらないと、売却を開始できません。
意見が割れてしまうと、10ヶ月という猶予期間がどんどん短くなってしまいます。
可能であれば、被相続人が亡くなる前から話し合いをして、方針を決めておきたいです。
まとめ
上でご説明したように、相続した不動産を売却するときは、高く売るだけでなく、納税の条件や期日のことも、意識する必要があります。
売却を委託する不動産業者を選ぶときも、経験豊富で親切な業者を選びたいです。
業者の選定を成功させる秘訣は、不動産一括査定サイト(サービス)の有効活用です。
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