住宅ローンの返済(借入)期間の決め方・考え方

最終更新日:

住宅ローンの返済(借入)期間の決め方や考え方を解説

「借入期間」と「返済期間」とでは、意味が違うのですか?
「借入期間」はお金を借りるときに契約する完済までの期間です。それに対し、「返済期間」は、実際に完済までにかける期間のことです。

借入期間は最長で何年?年齢は?

借入期間の設定は、完済までの年数完済のときの年齢の2つの影響を受けます。

完済までの年数 フラット35や財形融資の最長借入期間は35年です。
民間ローンも35年のものが多いようです。
完済時の年齢 フラット35や財形融資は80歳までとしています。
民間ローンは、これより短いものが多かったのですが、最近は80歳が主流です。
どこで借りても、借入期間に大きな違いは無くなっているのですね。

返済(借入)期間の世間相場は何年?

世間の人たちが、どのように借りてどのくらいで返済しているのか、調べました。

下の図は、借入期間(借りるときに設定する期間)と返済期間(実際に返済にかけた期間)の全国平均のグラフです(住宅金融支援機構「民間住宅ローンの貸出動向調査」2019年度)。

借入期間(借りるときに設定する期間)と返済期間(実際に返済にかけた期間)の全国平均

青い棒が、借入期間(借りるときに設定する期間)です。25〜30年が最多で、30〜35年がそれに続きます。

借入期間の平均は、26.7年です。

一方、返済期間(実際に返済にかけた期間)は、10〜15年で飛び抜けて多いです。10年未満というのも意外に多いです。

返済期間の返金は15.7年です。

「借入期間」と「返済期間」とで、10年以上の差があのですね!?

みなさん、返済を早めるための工夫をされているようです。

その代表が「繰り上げ返済」です。下で説明しています。

返済にかける期間の決め方は?シミュレーション解説

借入期間が長いとき、短いときの、それぞのメリット・デメリットを整理しました。

借入期間が長いとき

まず、借入期間を長くしたときのメリット、デメリットです。

メリット
  • 毎月の返済額を抑えられる。
  • 手元に資金を残せる。
  • 余裕ができたら「繰り上げ返済」するなど、柔軟に対処できる。
デメリット
  • 利息の総額は大きくなる。
  • 保証料が高くなることがある。
  • 老後の生活資金にしわ寄せがあるかもしれない。

借入期間が短いとき

次に、借入期間が短いときのメリット、デメリットです。

メリット
  • 利息の総額を抑えられる。
  • 返済から早く開放される。
  • 保証料が安くなることがある。
デメリット
  • 毎月の返済額が高くなる。
  • 返済が苦しくなっても、期間の延長は難しい。

15年、25年、35年で返済をシミュレーション比較

2000万円を借り入れて、1.3%の金利で返済するときの、返済期間による違いをシミュレーションしました。

15年返済
  • 毎月の返済額122,356円
  • 利息の総額2,045,394円
25年返済
  • 毎月の返済額78,121円
  • 利息の総額3,457,670円
35年返済
  • 毎月の返済額59,296円
  • 利息の総額4,925,624円
15年と35年を比べると、月々の返済は15年のほうが倍以上ですが、利息総額は半分近くまで少ないですね・・・

借入期間の長短で金利や返済方法は変わるの?

借入期間を長くしようと短くしようと、返済方法(元利均等返済か元金均等返済か等)には直接影響がありません。

一方、借入期間の設定が、金利に影響することはあります。

フラット35の例

たとえば、フラット35は固定金利ですが、金利の範囲は、借入期間によって2段階に分かれています(2020年5月)。

期間 金利の範囲 最瀕金利
15年~20年 1.23〜1.96% 1.23%
21年~35年 1.30〜2.03% 1.30%
借入期間が短いほうが、金利は少し低くなりそうですね。

銀行などの民間ローン

銀行などによる民間ローンの場合、フラット35と違って、金利が3タイプに分かれています。

  • 変動金利型
  • 固定金利特約型(一定期間固定金利で、その後変動金利になる)
  • 超長期固定金利型

「変動金利型」は、借入期間の長短の影響を受けません。

「固定金利特約型」は、あらかじめ固定金利の期間を年単位で指定しますが、その指定が借入期間の影響を受けることはあります。

「超長期固定金利型」の場合、フラット35と同じような仕組みで、金利が切り替わります。

そもそも、借入期間の長さによって、変動金利型か固定金利特約型か超長期固定金利型の選択が変わるかもしれませんね・・・

返済(借入)期間は変更できるの?

一般的に、いったん設定された借入期間を、契約後に延長するのは難しいです。

その理由は、上でシミュレーションをご覧いただきたように、期間を延長すると、利息のせいで、総返済額が大きくなります。

金融機関の立場からは、「返済期間を延長したい=返済が苦しい」と言う人の総返済額を大きくするのは、リスクがあります。

そのため、金融機関が納得できる返済の見通しを示せないと、延長を受け入れてもらえません。

逆に、返済期間の短縮は、スムーズにできます。繰り上げ返済という手続きになります。

繰り上げ返済とは?

繰り上げ返済は、毎月の返済とは別に、借入額の一部または全額を返済することです。

一部を繰り上げ返済した場合、それによって残りの返済期間を短縮する(=期間短縮型)か、期間の長さはそのままで、毎月の返済額を減らす(=返済額軽減型)かを選べます。

期間短縮型のほうが、利息が軽減され、総返済額が少なくなります。

ただし、返済は毎月のことなので、どちらの型が好ましいかはケース・バイ・ケースです。

住宅ローンの繰り上げ返済のイメージ図

おすすめの考え方

住宅ローンは、借入期間が長期に渡り、かつ返済額が大きいため、ご家庭に起こるであろうすべてのことと、無関係ではありません。

とは言え、ある程度優先度をつけてないと、いつまでも判断できなくなってしまいます。

とくに次のことに、強くご留意いただきたいです。

返済期間の重要ポイント
  • 定年を迎える前に完済できるのが理想的。
  • 「いくら住宅ローンを組めるか」ではなく「毎月いくらだったら返済できるか」を重視。
  • 子どもの教育費をメインに、将来の家計をシミュレーションする。
  • 現段階で見込める退職金や老齢年金を確認する。
  • 変動金利を選択した場合、長期的には金利上昇するつもりで。
  • 住宅は、新築から10〜15年でまとまったリフォームが必要になることを想定する。

返済期間を長くすると、総返済額が大きくなってもったいなく感じるかもしれません。

とは言え、頭金を入れすぎたり、月々の負担を大きくしすぎて、生活資金に余裕が無くなると、不測の事態に対応できなくなります。

スタート時点では、確実に続けられることを重視しましょう。