法人が不動産売却したときの仕訳と税金
法人が不動産売却したときの仕訳と税金
このページでは、法人が不動産売却したときの仕訳と税金について解説します。
不動産売買での法人税の計算
個人が土地等を譲渡した場合は、他の所得とは分離し、譲渡所得を計算しますが、法人は1事業年度のすべての益金額からすべての損金額を控除することによって、課税所得を算定します。従って、土地等の譲渡代金(益金)についても他の益金と合算して課税所得を計算します。
法人税額の計算方法
法人税額は、以下のように算出します。
上の「益金」は企業会計における収益と、「損金」は企業会計における費用とほぼ一致します。
ただし、一部に例外があります。
収益ではないが「益金」 | 国庫補助金、保険差益等にかかわる特別勘定の取崩し額等 |
---|---|
収益だが「益金」ではない | 受取配当金の益金不算入額、法人税等の還付金の益金不算入額等 |
費用ではないが「損金」 | 圧縮記帳による損金算入額、収用等における特別控除額、繰越欠損金の損金算入額等 |
費用だが「益金」ではない | 交際費・寄付金の損金不算入額、減価償却費の償却超過額、過大な役員報酬、法人税、罰科金等 |
法人税率
平成31年4月以降の、普通法人の税率は、下表のとおりです。
区分 | 税率 | |||
---|---|---|---|---|
資本金1億円以下 | 年800万円以下の部分 | 一般の法人 | 15% | |
適用除外事業者 | 19% | |||
年800万円超の部分 | 23.20% | |||
上記以外 | 23.20% |
譲渡日、取得日
不動産の譲渡日や取得日は、タイミングによっては経理処理や税金に影響します。
不動産の売買は、いくつかのステップに分けて進められるので、どの時点を譲渡日や取得日とするか、判断に迷うことがあります。
次の基準で判断してください。
譲渡日
譲渡日は、原則的には、不動産の引渡しを行った日(=「代金の相当部分(おおむね50%以上)を受取った日」または「所有権移転登記の申請をした日」)です。
ただし、売買契約の締結日を譲渡日とすることも認められています。
不動産の売却によって収益が生じたときは、譲渡日付で計上します。
ちなみに、農地の売買では、農地法上の許可を受けなければならないので、許可のあった日を譲渡日にできます。
取得日
原則として、不動産の引渡しを受け、使用可能になった日とされています。
ただし、「売買代金の30%以上を支払った日」〜「引渡しを受ける日」までの間の特定の日を、契約で取得日に指定できます。
取得日は、下で説明する、「長期譲渡」と「短期譲渡」の判定で使います。
土地の譲渡益に対する重課税
土地の売却で利益が出た場合、上の法人税とは別に、重課税を納めなければなりません。
重課税は個々の取引に対して課されるので、会社の決算が赤字であっても、課税されます。
重課税の税率は、売却した土地等の所有期間(取得日の翌日から譲渡をした年の1月1日までの期間)によって異なります。
長期譲渡 | 所有期間が5年超 | 税率5% |
---|---|---|
短期譲渡 | 所有期間が5年以下 | 税率10% |
低額譲渡(無償または時価より低い金額での売却)
法人が低額譲渡したときは、時価で取引したものとみなされ、時価との差額は相手方に贈与(寄付)したものとみなされます。
たとえば、時価1億円の土地を3000万円で売ったときは、差額の7000万円は、買い主への寄付金(買い主にとっては受贈益)になります。
ちなみに、時価とは、次のような価額です。
- 市場での取引価格
- 不動産鑑定士の評価額
- 公示価額比準倍率方式による価額
法人住民税・法人事業税
地方税である法人住民税・事業税は、国税である法人税の計算を元に算出されます。
法人住民税
法人住民税には、道府県民税と市町村民税があります。
そして、どちらの税額も、法人税割と均等割とを合算した金額です。
法人税割額
法人税割額は、国に収めた法人税額に、自治体ごとに決められている税率をかけて、算出されます。
なお、法人税額には、重課税を含めます。また、法人税法の規定によって税額控除したときは、控除前の金額を計算に使います。
税率は、都道府県と市町村とで、それぞれ異なります。各自治体のウェブサイト等でお調べください。
均等割額
均等割額は、資本金と従業員の人数に基づき、標準税率が定められています。
よって、赤字会社(所得がゼロ以下)であっても課税されます。
こちにらも、都道府県と市町村とで異なります。各自治体のウェブサイト等でお調べください。
法人事業税
法人事業税は、基本的に、各事業年度の所得に対して課せられる地方税です。ただし、所得以外の課税もあります。
税額の算出方法は、4パターンに分かれています。
資本金または出資金が1億円超 | いわゆる「外形標準課税」の対象になる。所得に対する課税である「所得割」の他に、「資本割(資本金等をもとに算出)」「付加価値割(収益配分額と単年度損益の合計を元に算出)」も加算される。 |
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資本金または出資金が1億円以下 | 所得に対する課税である「所得割」のみ。 |
特別法人(農協、信金、医療法人等) | 所得に対する課税である「所得割」のみ。税率は1億円以下の法人と異なる。 |
電気・ガスの供給業者、保険業者 | 収入に対する課税である「収入割」のみ。 |
消費税
法人が不動産を売却するためには、消費税が課税されます。
ただし、課税されるのは建物で、土地は非課税です。
土地と建物の価格の配分
消費税にかんして、気をつけていただきたいことがあります。
上で説明したように、消費税の課税は、土地と建物とで異なります。
ただし、土地付きの建物を売却する場合、土地と建物を合わせて売出価格を設定し、買い手と交渉するのが一般的です。
売買の交渉は土地・建物を一体としておこなうとしても、売り手としては、売買代金の土地と建物とも配分を念頭に置く必要があります。
納税のときに困らないように、土地と建物との配分を決めて、正確な消費税を請求しておきたいです。
配分方法についてのルールはなく、合理的な方法であれば認められます。逆に言うと、合理性のない方法をとると、税金逃れを疑われるかもしれません。
実際に採用されることが多いのは、次の2つの方法です。
- 売却時の固定資産税評価額によって土地と建物の価格を決める。
- 不動産鑑定士に鑑定評価してもらい、土地と建物の価格を決める。
固定資産税評価額をもとに半分するのがもっとも一般的で手軽です。
ただし、条件によっては、不自然な配分になることがあります(たとえば、古い建物ほど、固定資産税評価額と時価とに齟齬が出やすい)。
そういうときに、不動産鑑定士に鑑定評価してもらいます。
ただし、鑑定評価にも費用(数十万円)がかかります。それに見合う節税効果を見込めないなら、鑑定評価を見送ることもあります。
まとめ
税金について相談するのは、第一に、法人が契約している公認会計士や税理士です。
ただし、とくに消費税の取り扱いなどでは、不動産業者との連携も必要になります。
それだけに、経験と実績のある業者をパートナーにしたいです。
不動産業者選びでは、不動産一括査定サイトの利用をおすすめします。
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